【第13回総選挙 Pilihan Raya Umum ke-13 の結果 -政権交替ならず】国会下院総議席数 222 において、Barisan Nasional (国陣) 陣営が 133議席、 民聯 (Pakatan Rakyat) 陣営が 89議席でした。この結果Barisan Nasional (国陣) が、引き続き政権を維持することになりました。
Barisan Nasional (国陣) は3分の2議席確保には至らず、過半数確保の勝利となりました (Intraasia 注:Barisan Nasional (国陣)6対民聯 (Pakatan Rakyat) 4という比率)
各州の州政権においては、Barisan Nasional (国陣)がケダー州を奪い返して10州で州政権を獲得しました。その結果民聯 (Pakatan Rakyat)が勝利した州はスランゴール州、ペナン州、クランタン州の3州です。
民聯 (Pakatan Rakyat) はペラ州とトレンガヌ州で僅差で州政権奪回に届きませんでした、またジョーホール州で大きく議席数を増やし、サバ州で初めて10議席を超えました。
投票率は約85%でした。これは過去最高の投票率とのことです。
Barisan Nasional (国陣) 政党 | 国会 候補者 | 当選者 | 州議会 候補者 | 当選者 |
UMNO 巫統 | 119 | 88 | 338 | 242 |
馬華公会 MCA | 37 | 7 | 90 | 11 |
インド人会議 MIC | 10 | 4 | 18 | 5 |
民政党 Gerakan | 11 | 1 | 31 | 3 |
サラワク州 土保党PBB | 14 | 14 | --- | --- |
サラワク州 その他党 | 17 | 11 | --- | ---- |
サバ州 団結党PBS | 5 | 4 | 13 | 7 |
サバ州 その他党 | 6 | 4 | 11 | 7 |
その他 | 1 | 0 | 0 | 0 |
合計 | 221 | 133 | 505 | 275 |
民聯 (Pakatan Rakyat) 政党 | 国会 候補者 | 当選者 | 州議会 候補者 | 当選者 |
イスラム党 PAS | 73 | 21 | 236 | 85 |
人民公正党 PKR | 99 | 30 | 172 | 49 |
民主行動党 DAP | 51 | 38 | 103 | 95 |
合計 | 223 | 89 | 511 | 229 |
諸派と無所属 | 国会 候補者 | 当選者 | 州議会 候補者 | 当選者 |
諸派 | 56 | 0 | 115 | 1 |
無所属 | 79 | 0 | 191 | 0 |
合計 | 135 | 0 | 306 | 1 |
注記:
・政党名は正式なマレーシア語党名または英語党名の略称、及び華語新聞の用いる華語党名を基にしています。
・立候補受付時とは幾分人数に変化がある、これが確定数です。
・国候補者: 国会下院の候補者、 州候補者: 州議会の候補者
・諸党には愛国党、サバ州の進歩党と立新党、サラワク州の革新党、イスラム陣線、社会主義党などがある。
各州と連邦直轄領における結果 | 国会 議席数 | Barisan 国陣 | Pakatan 民聯 | 州議会 議席数 | Barisan 国陣 | Pakatan 民聯 |
ペルリス州 | 3 | 3 | 0 | 15 | 13 | 2 |
ケダー州 | 15 | 10 | 5 | 36 | 21 | 15 |
クランタン州 | 15 | 5 | 9 | 45 | 12 | 33 |
トレンガヌ州 | 8 | 4 | 4 | 32 | 17 | 15 |
ペナン州 | 13 | 3 | 10 | 40 | 10 | 30 |
ペラ州 | 24 | 12 | 12 | 59 | 31 | 28 |
パハン州 | 14 | 10 | 4 | 42 | 30 | 12 |
スランゴール州 | 22 | 5 | 17 | 56 | 12 | 44 |
N・スンビラン州 | 8 | 5 | 3 | 36 | 22 | 14 |
マラッカ州 | 6 | 4 | 2 | 28 | 21 | 7 |
ジョーホール州 | 26 | 21 | 5 | 56 | 38 | 18 |
サバ州 | 25 | 22 | 3 | 60 | 48 | 11 |
サラワク州 | 31 | 25 | 6 | --- | -- | -- |
クアラ ルンプール | 11 | 2 | 9 | -- | -- | -- |
連邦直轄領2 | 2 | 2 | 0 | -- | -- | --- |
合計 | 222 | 133 | 89 | 505 | 275 | 229 |
注記:
・サラワク州だけは今回州議会選挙が行われていない。
・クアラルンプールを含めた連邦直轄領は州ではないので、州議会はありません。
・表には載せていないが、サバ州州議会で諸派1人が当選。
動画の紹介: Barisan Nasional (国陣) の議長でもある ナジブ UMNO総裁 (首相)が行う、
総選挙勝利演説の模様です。
Intraasiaの分析登録有権者数 1326万人中投票者数は1125万でした、(国会議員選挙の場合)。投票率は84.8%というこれまでにない高さになった。州議会選挙はサラワク州が行われていないので、人数は減るが投票率は同じようなものです。
Barisan Nasional (国陣) は国会選挙では前回に比べて 7議席を減らした、州議会選挙では 1割議席数が減った、つまり勝利はしたが全体的に民聯 (Pakatan Rakyat) との差が縮まった。
国会選挙に関して: サバ州とサラワク州でBarisan Nasional (国陣) は計56議席中47も獲得している。半島部だけをみると、計166議席中、Barisan Nasional (国陣) が86、民聯 (Pakatan Rakyat) が80です、つまり勢力は拮抗している。Barisan Nasional (国陣) が今回勝利した最大貢献はサバ州とサラワク州での圧倒的な多数議席獲得にある。
クアラルンプールは依然として民聯 (Pakatan Rakyat) が圧倒的に強く、同様に圧倒的な強さを示したスランゴール州を含めて首都圏は民聯 (Pakatan Rakyat) の牙城であることに変わりはない。
ケダー州はPAS党主体の前州政府の失政から、Barisan Nasional (国陣) に州政権を奪回された、ただPASの伝統的本拠地であるクランタン州は引き続き州政権を維持した。
ペナン州で民主行動党DAP主体で今回も圧勝し、Barisan Nasional (国陣) の華人政党である馬華公会MCAと民政党は全く議席を失った。
1957年のマラヤ連邦独立以来政権の中枢である UMNO は今回も強さを発揮し、Barisan Nasional (国陣) の勝利につながった。半島部でのBarisan Nasional (国陣) の主要構成党である、馬華公会MCAは大惨敗し、インド人会議党MICは国会州議席合わせても10議席に届かない、このため半島部でのBarisan Nasional (国陣) 内における UMNOの地位はこれまで以上に大きなものとなった。華人政党馬華公会MCAは岐路にあるといえる。
サバ州ではBarisan Nasional (国陣) に属する、州独自政党がBarisan Nasional (国陣) の約3分の1を獲得し、UMNOの組織がないサラワク州ではBarisan Nasional (国陣) の州独自政党が圧勝している。
PAS党はマレー州であるクランタン州とトレンガヌ州、及びスランゴール州でほとんどの議席を獲得している、ケダー州は前回より大幅に減った。この4州以外での勢力拡大は依然として難しそうである。
人民公正党PKRはスランゴール州とペナン州で主として議席を稼ぎ、次いでケダー州で勢力がある、しかしその他の州では目立った強さはない。ただサバ州では今回健闘した。
民聯 (Pakatan Rakyat) で今回最大の強さを示したのは民主行動党DAPです。国会と州議会の両方で民聯 (Pakatan Rakyat) 中の最多議席を得た。このことが意味するのは、華人界の圧倒的多数が民主行動党DAPを支持し、行動党の候補者のいない選挙区では人民公正党PKRの候補者を支持したということです。華人界が突出して民聯 (Pakatan Rakyat) 支持を示したことが、今後の問題になりかねないとも言える。
サバ州では、民聯 (Pakatan Rakyat) との協力を断った州独自政党の2つは合わせて100人以上の候補者を立てたが、わずかに州議席1つだけの獲得に終わった。半島部の政党と一線を画しサバ主義を貫くあり方に大きな支持は得られないようだ。
日本など外国のメディアが気が付かないこと
州によって登録有権者数が大きく異なるが、その州の国会議席数は登録有権者数を全く反映していない。民聯 (Pakatan Rakyat) が大きく勝利した、クアラルンプール: 79万人、ペナン州: 85万人、スランゴール州: 205万人、これは国内で最多です。 一方Barisan Nasional (国陣) が20議席以上獲得して大きく勝利した、サラワク州:108万人、サバ州: 98万人、ジョーホール州:160万人。 このように違いがあっても 1票の格差ということは全く話題にされない。上記で指摘したように、サバ州とサラワク州の有権者数は州の中で中程度であり、この両州の有権者合計数はスランゴール州のそれとほぼ等しいのに議席数は合わせて56もある。 一方スランゴール州の議席は22に過ぎない。 Barisan Nasional (国陣) にとってサバ州とサラワク州はまさに議席の稼ぎ場である。 加えて有権者の多いジョーホール州です。
選挙戦のムードはひょっとしたら政権交代もありえるかのような雰囲気であったが、ムードだけで選挙は決まらない。 ここで解説したような背景があるからこそ、イントラアジアは選挙戦中の載せた記事中で書きました、「今回の選挙は一方が圧倒的に大勝する結果にはなりにくいとの観を持ちます。ただ大議席数を持つサバ州とサラワク州は依然として圧倒的にBarisan Nasional (国陣) 有利なので、半島部で民聯 (Pakatan Rakyat) が大きく勝利しない限り、政権交代は難しいのではないだろうか」